いわゆる自慢話
「愛せるモノを、持たないか?」
これは本町にあるレザーショップ「スナワチ」さんのスローガン。愛せるモノ…お気に入りのモノ、思い入れがあるもの、作り手の思いが詰まったもの…愛せるモノの捉え方はいろいろあるけど、共通して言えるのはきっと、長く大切に使いたいと思えるモノだと思う。自分にとってそれは何だろうと考えた時に、私は少しでも自分のモノに関わってみたいと思ってしまった。
と言うわけで今回こちらのスナワチさんにて、スナワチの社長、前田将多さんと、併設されている工房にて作られているレザー職人、big mouse jimmyの後藤優太さんのご協力いただき、財布作らせてもらいました。笑
もちろん手伝ってもらいながら、やってもらいながらですが、なかなか沢山の事をやらせてもらったのではないでしょうか。
本当に貴重で楽しい体験をさせていただいたので、こりゃ自慢するしかねえなと思ったわけですよ。
だからこれ今からただの自慢話なんで。笑
財布ができるまでの工程が知りたい方と、私の自慢話が聞きたい方は見てってね♡
さて、まずは出来上がりをご覧ください。
うわぁ。たまらんわあ。この滑らかな質感。綺麗なレザーの青と、色味を合わせた水色の縫い糸。このフラップ部の滑らかな曲線。ずっと見てられるわあ。
あ、すいません。見惚れてました。
え?中味も見たいって?しょうがない子♡
そこまで言うなら特別よ♡
うわぁ。たまらんわあ。鮮やかな外見に対しての中は落ち着いた焦げ茶。大きなコインケースと、カードがたっぷり入る中味。取り出しのストレスがないように大きく開くように作られたマチ。差し色の鮮やかなオレンジ。
ずっと見てられるわあ。
あ、すいません。見惚れてました。
この財布、フルオーダーでございます。すべて自分で決めさせていただいております。
どうだい?カッコいいだろう?最高だろう?
愛しちゃうだろう?
分かる。分かるよ君の気持ち。知りたいよね?もっと知りたくなっちゃうよね?まあまあ、落ち着きなさいって♡
11月の頭頃、私は家族でスナワチさんに伺わせていただきました。目的は後藤さんに財布のオーダーをお願いするため。この財布のオーダー、私が嫁に説得を重ねた結果にいただいた許可なんでもうそれだけで愛せるモノなんですけど。
そのオーダー中で外見をどうする、中味をどうする、縫い糸をどうするやら相談させてもらってる中で、レザークラフトがちょっと気になってた私(やったことはない)がふと「どっかコバ磨きとかできそうなとこだけ、自分でさせてもらう事ってできます?」っという迷惑甚だしいお願いをしたわけです。めっちゃウザいやんこいつ。
しかしそんな無茶なお願いもスナワチのお2人は「ええんやで」「かまへんで」と快諾して下さいました!※多少の脚色あり。
ですがこの時点で後藤さん、なかなかオーダーが溜まっており、私の財布に取り掛かるのは1月ごろ。ええ。待ちますとも。いつまででも待ちますとも!
そして1月!ついに後藤さんとツイッターでこの様な会話が!
んっ!?型紙から!?そんな所から見せていただけるなんて!!もう大興奮でございますよ。早速DMで日程のご相談をし、あとはその日が来るのを待つのみ!!
だ
っ
た
の
で
す
が
・
・
・
インフルエンザになっちゃった♡てへっ♡
いやあ、地獄でしたよ。39.9度とかなに?なにあれ?宇宙?宇宙にいたよあれは。
そして改めて日程を調整し、待ちに待ちに待った当日でございます!
10時にスナワチさんに伺い、後藤さんとお会いしましたよ!後藤さんは仰りました!
「ほな型紙切るところから始めるさかいに、一緒にしよか」※多少の脚色あり。
えっと…私は「できそうなとこ」って言ったような…でもこれはつまり最初からやらせていただけるってことやよな…それって…つまり…
最高やないか!!
まさに神展開でございます。
レザーやけども神(紙)展開でございます。
\HAHAHA/
まさかの、最初から関わらせていただくことになりました!
というわけで始まった財布作り、まずは型紙を使ってパーツを切り出すところから始まりました。
型紙を使ってレザーに短い針のようなものを使い、パーツの形をつけていきます。少しでもロスが出ないように気をつけながらも、レザーはどうしても部分によって色味が違うので、その辺を吟味する後藤さん。私は中のカード入れの部分の型を取らせていただいたりしました。
するとなにやら、型紙を使わずに何かを考え出す後藤さん。聞いてみると、今回は財布の形が違うので、またちがう型をとらなければいけないそう。
そうなんです。私、もいっこ無理なお願いをしていたのです。
まずは後藤さんが普段作られている財布をご覧ください。
うん。カッコいい。
そして次は私がオーダーした財布。
うん。カッコいい。
じゃなくて。笑
そう!形が違うんです!
後藤さんが普段作られている財布は、ファスナーで閉じるタイプなんですが、私がオーダーしたのはフラップで閉じるタイプなのです!だから型紙がないのです!
うっわこんなん書いといてアレやけど俺めっちゃうざいやん!マジめんどくせえ!この客ちょーめんどくせえ!笑
ですが後藤さんは頭の中に設計図があるのか、それを基に考えて型を取っていました。本当にすごい。
型を取ったら次は裁断していきます。
画像が無いので申し訳ないのですが、後藤さんの革包丁、めちゃくちゃ切れます。大まかな裁断だけさせていただいたのですが、断面がもうね、キレイ。その革包丁を使って裁断している後藤さんは本当にカッコいいです。
パーツが取れたら次は「トコ処理」をします。財布だと小銭入れの内側などはレザーの裏側になるのでこれをしないと傷むのが早かったり、使っているうちに毛羽立ってきたりするらしいのです。なので内側を使うパーツには薬剤を塗りコーティングしていきます。これも画像はないので拾ってきた画像を
上半分がトコ処理前で、下半分がトコ処理後です。そしてそのままだと手触りが悪かったりするので
ガラス板を使ってゴリゴリ擦って滑らかにします。そして二度塗りし、二度磨きます。
そうすると本当にもうツヤッツヤで滑らかで最高になるのです。最高なのです滑らかでツヤッツヤで。
ちなみにこの作業をしている時くらいに社長の前田さんは出勤されました。これは特に遅刻とかではなく、僕がオープンの1時間前からお邪魔していたからです。笑
というわけでここからは3人で、後藤さんに作りかたを聞いたり、前田さんとレザーの話や世間話をしながら作っていました。
それが終われば次はまずは細かいパーツのコバ磨きをしていくのですが…
その前に、コバ磨きをキレイに仕上げるために、パーツの断面をまずは紙ヤスリで滑らかにします。この一手間が本当に大切で、断面を直接コバ磨きしたものと、一度紙ヤスリをしてからコバ磨きしたものとではキレイさが変わってくるのです。なのでパーツをひとつひとつ丁寧にヤスリがけしました。
そしてコバ磨きです。
コバ磨きというのはとても大切な作業で、革の端のほつれや耐久性などの品質だけじゃなく、出来映えや完成度にも関係してきます。
後藤さんのコバ磨きは本当に丁寧で、例えば財布のマチになるパーツの下になる部分や、カード入れの下になる部分、縫っちゃえば見えないようなにもしっかりとコバ磨きをしていきます。本当に大切に作っているし、少しでも丈夫で長持ちするようにという優しさが作業中の後藤さんからは滲み出ていました。
細かいパーツのコバ磨きが終わると、いよいよパーツを縫い合わせていきます!
まずは両面テープを使ってパーツ同士を仮止めして
「菱目打ち」という工具とハンマーを使って縫い合わせるための穴を開けます。
また縫い糸には蜜蝋を塗り、さらにそれをドライヤーで温めて中に浸透させます。
そしてそれを使い、縫い合わせます。
これを繰り返してカード入れをどんどん縫い合わせていきます。
この縫う作業がね、難しい!縫い方にも針を刺す方向や順番、縫い糸の位置など決まりがあって、それを正しくやらないと縫い目がぶっさいくになってしまうんです。かといって一個一個気にしていたら本当に終わらないし、とにかく地道にやっていくしかない作業なんです!なんとか地道にやっていたのですが、この日の最後の縫い作業でやっちまいましたよ。
縫い目、失敗してるー!!
分かる人には分かると思うんですが、3箇所くらい失敗してるんです…見つけた方には
「テメェ見つけるんじゃねえ!」
って言ってあげるので探して下さい。笑
最後の最後に失敗してしまい、1日目はここで終了しました。
私が苦戦してる間にコインケースをチャチャっと作っていた後藤さん。いや本当にすごい…
んっ?1日目?そうです。1日で終わらなかったの。10時から始めて7時に終わったから、9時間もやってたんですねー。マジで一瞬やった。笑
この他にも財布のフラップ部のデザインをさせていただいたり、機械での革漉きをさせていただいたり、本当に楽しい1日でした。
後藤さんは「後はやっとこうか?」と優しい言葉をかけてくださったんですが、ここまできたら最後まで関わりたいと思い、もう1日させていただくことになりました。まじで図々しい!俺こいつ嫌い!笑
そして2日目です!今日はなんとジョージ店長もご出勤♡
前田社長はずっとデレデレでした。笑
この日スナワチさんに伺ったときには、後藤さんがカード入れとコインケース、マチの部分を取り付けて下さっていました。
また、ここまでくるとさすがに出来上がりの見映えに影響が出てくるので、2日目は見させていただくことが多かったです。でもそんな中でも財布のボタンを付けさせていただいたり、縫い作業やコバ磨きをさせていただきました。
このボタン、自分で付けたんだぜ♡
後はフラップ部を裁断して、全体を縫い合わせていきます。
曲線を革包丁で切っていく後藤さん。惚れ惚れするほどキレイに切ります。あと切り終わったあとのドヤ顔がすごかったです。笑
切り終われば菱目打ちをして、いよいよ全体を縫い合わせていくのですが…
めっちゃこれ難しいよ!!
少しだけさせていただいた部分、カード入れや青の表面になる部分などでレザーが4枚くらい重なっている部分があるのですが、菱目打ちをしていてもどうしても糸を通す穴がズレている部分があり、それを探したり針を通すのがとにかく難しい!
あまりグリグリやると穴が大きくなって仕上がりが汚くなるし、でも探さないと針が通る穴がないし、前回縫い方失敗したのが怖くてじっくりしたらめっちゃ時間かかるし、分厚くなったレザーに針を通しているとすぐに指が痛くなるし、本当に難しいんです!
ですが後藤さんは本当に布を縫うかのように素早く丁寧に縫っていきます。この姿がカッコよくて。
まさに「職人技」。いったいこれができるようになるまでに一体どれだけの時間を費やし、どれほどの失敗を積み重ねたんだろう。それでも後藤さんはこれからも満足せずに積み重ねていくんだろうなあ。
全体を縫い合わせれば、いよいよ最後の作業、周りをコバ磨きしていきます。
周りをルーター(ローターではない)という機械で粗く削っていき
次は粗さの違う2種類の紙ヤスリ(240番と400番だったかな?)を使ってコバ磨きしやすいように滑らかにしていきます。
コバ磨きをする前の面は本当にデコボコ感が一切なくサラサラ!もうこれで完成でもええんちゃう!?ってぐらいのサラサラ!
そしてコバ磨きです!
コバ磨きも丁寧に、一度塗ったところに紙ヤスリをかけて二度塗りです。これ、仕上がりの綺麗さが段違い。みんなレザーの仕上げのコバ磨きは絶対に二度塗りしいや!その前に絶対ルーター(ローターではない)と粗さ変えた2種類の紙ヤスリでサラサラになるまで磨くんやで!
最後にコインケースのファスナーに持ち手をつければ
完成でございます!!
いやーもうね、言葉もないです。言葉とか要らんよ。ずっとニヤニヤしてたもん。それしかできへんもん。感無量ですよ。愛せるモノどころか、愛してやまないモノができてしまいました。
世の中には、財布を作るなんて経験をした人は一体どれくらい世の中にいるんだろう。その中でさらに、ゼロからこうやって関わらせていただき、沢山の時間を費やして作ったことがある人はどれだけいるんだろう。
財布なんて本当は買えば一瞬なんですよ。ネットとクレジットカードを使えば何もせずに買えて、勝手に届けてくれるしね。でもそれは私にとっては便利なだけ。ただそれだけ。そんなことよりも私はこうやって沢山のことを知り、学び、失敗した、人生には何の役にも立たない財布を作った2日間を大切にできる人間でいたい。
この2日間、私には間違いなく最高に贅沢で最高に充実した時間でした。このどうしようもないわがままを快く受け入れて、沢山のことを教えてくれた後藤さん、2日間もお店に居座らせていただき、私の財布作りを一緒に楽しんでくれた前田さん、本当にありがとうございました。2人のおかげで完成した「愛せるモノ」大切にします。